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出雲人(電子版:【EPUB】)
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とかく消極的で即応性のないといわれる出雲人気質はどこからきたのか。
それは一刻も早く捨て去るべきなのか。
いや出雲人的生き方、出雲人的意識形態こそ必要なのではないか。
「出雲人」についてその歴史から特質まで鋭く切り込んだ問題の書。
*本書は「出雲人~新装版」の電子書籍版です。
発売日 : 2021/8/11
言語 : 日本語
藤岡大拙(ふじおか だいせつ):著
昭和7年島根県出雲市斐川町に生れる
京都大学文学部史学科(国史学専攻)卒業
同上大学院文学研究科修士課程修了
島根県立島根女子短期大学元学長
しまね文化振興財団理事長
松江歴史館館長
荒神谷博物館館長
NPO法人出雲学研究所理事長
著書『カラー出雲路の魅力』、『山中鹿介紀行』、
『島根郷土史ノート』、『島根地方史論攷』ほか
「むすびにかえて」より
出雲人気質の中身とその形成過程について、あまりに冗長に述べすぎたかもしれない。しかも、ときには脱線して、論点のぼけたところも再々である。しかし、出雲人気質には誇るべき長所もあるが、短所もそれ以上にあることをご理解いただけたと思う。
私は出雲人気質を書きながら、ひょっとすると、日本人の意識構造のミニチュア版ではないかとも思った。かつてハーンが、出雲地方の伝統文化を通して、日本文化を理解したように、出雲人の気質を通して日本人を理解することができるのではないか。
ところで、当初私の主眼は出雲人気質の洗い出しと、その短所をいかに剋服するかという点にあった。
私は草稿の段階で、その短所が今日叫ばれている地域活性化をいかに阻んでいるか、その短所をどうすればいいかを、かなり具体的に述べていた。そして数人の友人に読んでもらったところ、意外にも異口同音に厳しい批判をいただいた。
「あなたは現実の政治や行政、あるいは社会にまで論及すべきではない。出雲人気質そのものの実態を分析し、提示すればそれでいいことだ」
「地域活性化問題は、長い目で見れば一過性である。あなたはそんなことにとらわれないで、内容的に息の長い出雲人論を書くべきだ」
私は近年とみに市町村の活性化イベントに参画する機会が多くなった。それらのイベントに企画段階から参加してみて、私なりに住民や行政の活動と出雲人気質との関わりについて考えてきた。しかし、友人たちの批判を聞いたとき、私は自分の守備範囲を越えていたことに気づいたのである。やはり私は歴史学者の端くれである。それが法を越えて発言したとき、どんな誤謬をおかすかも分らない。大きく的を外れたことを書いたり、無意味に人を傷つけたりするかもしれない。友人たちはそのことを心配してくれたのである。
そこで私は、出雲人気質の欠点をどうしたらいいかという問題をカットすることにし、むしろ読者の皆さんに考えていただくことにした。これは一見責任のがれのように見えるが、へたに私見を述べて、間違った方法を提示することは私の本意ではない。本書が豊かな郷土づくりのたたき台となれば、望外の望みである。
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