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写真集「Archaic Future ひとつながりの記憶」

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エバレット・ケネディ・ブラウン(著)
ISBN978-4-86456-366-6 C0072
A4変型判 128p 上製本
2020.11.28初版発刊

幕末時代の写真技法、湿板光画で日本を撮影し、世界に発信し続けるエバレット氏が撮る「出雲」(限定特装版)。

◆著者について
エバレット・ケネディ・ブラウン
アメリカ・ワシントンD.C.生まれ。一般社団法人京都会所の代表。フォトジャーナリストとして50カ国以上を旅し、1988年から日本に定住。ブラウンズフィールド代表、EPA通信社日本支局長や東京大学先端科学技術センター客員講師を経て、日本の深層文化の面影を江戸時代の技法「湿板光画」で撮影する。作品が国内外の美術館に展示、または収蔵されている。著書『日本力』(松岡正剛氏との共著、PARCO出版)、『Japanese Samurai Fashion』(赤々舎)、『失われゆく日本』(小学館)『先祖返りの国へ 日本の身体-文化を読み解く』(晶文社)『京都派の遺伝子』(淡交社) ほか多数。文化庁長官表彰受賞。
Everett Kennedy Brown is a Kyoto based American artist, writer and director of the Kyoto Kaisho foundation. He has written numerous books in Japanese and is internationally known for his experimental approach to early photographic processes in his deeply intuitive photographic exploration of Japanese deep culture. His photographs are in the permanent collections of several major international museums. In 2013 he was awarded the Japanese Government's Cultural Affairs Agency Commissioner's Award for his activities to promote Japanese culture.

懐かしい物語のような
 私たちの神はたくさんの顔をもっている。神々はその土地と深く結びついている。私たちの神はあらゆるものに宿る。私たちは「もの」が「語る」ことを、ストーリーと呼ぶ。私たちにとってストーリーは、人間ではない「もの」たちの言葉として記述されてきた。
私たちは「もの」の声を聞き分ける。たとえば、納屋にある農具たちもおしゃべりをする。からすや野鳥も、木々も、囲炉裏の灰ややかんもそれぞれの役割といのちをもっている。これは、ファンタジーではない。私たちにとって、森羅万象のすべてが自分と分けへだてることのできない、ひとつながりのいのちとして感じられてきた。
 そういう時代がかつてあった、というべきかもしれない。いまも日本には、「もの」に宿るいのちを鎮魂する儀礼が多く残っているが、年々に形骸化していることは認めざるえない。 
 女たちは使い古した針を供養した。割れた茶わんを供養した。日々の暮らしを支えてくれる道具たちがもう使えなくなったとき、敬意と感謝をもって道具を鎮魂した。日本は鎮魂の国である。だが、それもまた、そういう時代があった、と過去形で言うべきなのかもしれない。
 木を伐採する時は木の霊に切ってもよいかと尋ねる。地に家を建てる時は地鎮祭を行い神への許しを請う。私が子どもの頃……つまり、第二次世界大戦終戦から二十年後の頃の日本には、「たてまえ」と呼ばれる風習が生きており、家の棟上げをする時には家主がお金や餅をまいて近所の者たちにふるまった。
 告知はなく噂として広がるこの儀式に、どこからともなく人が集まり去って行く。集い与えることが神への祈りであった。神々は気前がよく、人間の幸せを喜んでいた。生まれた土地の神は産土(うぶすな)神と呼ばれ、たとえその土地を離れても、死ぬまで守護してくれると教えられた。故郷を離れても、生まれた土地の神が見守っている。私はいまもそう感じているが、産土ということばを知っている者も少なくなった。
 山林が国土の七十パーセントを占める私たちの国の地形は起伏に富み、川が多く、自然環境は厳しい。大陸に住む人々から見れば、ちっぽけな列島のわずかな平地にへばりつくように暮らし、台風や地震で年中家を壊されている私たちを不憫に思うかもしれない。
 よくもまあ、あんな場所に住み続けているな、と呆れるかもしれない。
 だが、私たちは台風や地震にも神の存在を感じ、荒ぶる気まぐれな神々と交渉しながら生きてきた。何千年も前から神々と我々は共存してきた。昨今、気候変動による自然災害で、もっとも大きなダメージを受けている国として日本は世界の人々に知られている。だが、この国土を捨ててどこかへ移住しようとする日本人は、いまのところ少ない。

 なぜ、私たちはこの土地に住み続けているのか。
 その疑問に、この写真集が答えているかもしれない。

田口ランディ

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